砂漠を羨望して久しい。
砂漠には、金字塔がある。
風と空の生む抑揚の果てに、焦点がある。天候、心身の如何に問わず、民は遺跡を注視し、祈念したであろう。いつからか金字塔は、不変に偉大な功績に例えられるようになった。
金字塔と呼ばれる作品に、The Joshua Tree(ヨシュアツリー)がある。1987年、U2が発表したロックアルバムだ。
デビュー以来アメリカツアーを繰り返し、憧憬を強めたU2は、アメリカのルーツを辿り、現代へ提言するアルバムを製作した。それは文明と出会う場所として、The Joshua Treeと名づけられた。
The Joshua Treeは、砂漠に立つ姿そのままに、荒廃した80年代のロック史に燦然と輝く金字塔となった。マイケル・ジャクソン率いるスーパースターを退け、モノクロ写真と金色に印字されたThe Joshua Treeは、グラミー賞はじめ幾多の賞を受けた。ロック史全体において偉大な一枚である。
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これまで、私は拠り所のないままに傲慢な自尊心とともに生きてきた。挫折こそあれど、求められた成果はたいてい達成した。私の中には街があった。
成長とともに思うようにいかないことも増えた。全く選択を誤ったこともあった。なりたい自分を変えなければならない、受け入れがたい現実も迫るようになった。奢れる者も久しからず、街が朽ちていった。崩れ落ちる様を見つめるばかりの私には、次なる自分への指南書など当然持ち合わせていなかった。
悩める学生時代に、一人のアメリカ人のカバーを見た。探しているものがまだ見つからない、と歌っている。
調べた。U2。
聴いた。さらされた。
聴いた。打たれた。
これだ。これが指南書だ。
私は、自分のために生きねばならない。
名もなき道を辿り、約束の地を目指さなければならない。
これが、ロックか。
2017年5月、私の人生に金字塔が建った。
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