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The Joshua Tree Tour 2019

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砂漠を羨望して久しい。

砂漠には、金字塔がある。
風と空の生む抑揚の果てに、焦点がある。天候、心身の如何に問わず、民は遺跡を注視し、祈念したであろう。いつからか金字塔は、不変に偉大な功績に例えられるようになった。

金字塔と呼ばれる作品に、The Joshua Tree(ヨシュアツリー)がある。1987年、U2が発表したロックアルバムだ。
デビュー以来アメリカツアーを繰り返し、憧憬を強めたU2は、アメリカのルーツを辿り、現代へ提言するアルバムを製作した。それは文明と出会う場所として、The Joshua Treeと名づけられた。

The Joshua Treeは、砂漠に立つ姿そのままに、荒廃した80年代のロック史に燦然と輝く金字塔となった。マイケル・ジャクソン率いるスーパースターを退け、モノクロ写真と金色に印字されたThe Joshua Treeは、グラミー賞はじめ幾多の賞を受けた。ロック史全体において偉大な一枚である。

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これまで、私は拠り所のないままに傲慢な自尊心とともに生きてきた。挫折こそあれど、求められた成果はたいてい達成した。私の中には街があった。

成長とともに思うようにいかないことも増えた。全く選択を誤ったこともあった。なりたい自分を変えなければならない、受け入れがたい現実も迫るようになった。奢れる者も久しからず、街が朽ちていった。崩れ落ちる様を見つめるばかりの私には、次なる自分への指南書など当然持ち合わせていなかった。

悩める学生時代に、一人のアメリカ人のカバーを見た。探しているものがまだ見つからない、と歌っている。

調べた。U2。
聴いた。さらされた。
聴いた。打たれた。
これだ。これが指南書だ。
私は、自分のために生きねばならない。
名もなき道を辿り、約束の地を目指さなければならない。
これが、ロックか。

2017年5月、私の人生に金字塔が建った。

sites.google.com


こんばんは。けーごです。

U2のライブ、The Joshua Tree Tour 2019に参加しました。
伝説的なロックアルバムの30周年を記念したThe Joshua Tree Tour 2017が、2017年5月に始まりました。2017年には日本公演が含まれず、その後のツアーでも来ませんでした。どうやら、U2はしばらく来日していないらしい。

マイケル・ジャクソンの死を受け入れなければならなかったぼくは、U2こそは拝みたいと願ってやみませんでした。The Joshua Treeとともに旅をし、その思いは日を追うごとに増すばかり。陸前高田の奇跡の一本松を見ては、あたかも自分にとってのヨシュアツリーと認識するほどでした。

2018年には、新たなアルバムのツアー iNNOCENCE + eXPERIENCE TOURが。 そこでは、ボノが生死をさまようほどの出来事があったこと、ライブで突如発声しなくなったことが明かされた。ボノはもうすぐ60だ。近年のライブで圧倒的なパフォーマンスをしていても、U2の存続はなにも保証されない。どうかお目にかかりたい。どうか元気でいてほしい。

そう思う2019年、ニュースが。
The Joshua Tree Tour 2019!?続きがあったの!?U2が13年ぶりに日本に来んの!?
なんとしても行かねばならない。ありとあらゆるものを差し置いて行かねばならない。大枚を叩いてでも行かねばならない。2番目に高いチケット(グッズ付きSS席 3万9000円)を2日間とも応募し、2日目に当たりました。実質タダ。今年の運は使い果たしました。金字塔を目にするときが来ました。


12月5日
13:00 グッズ販売

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グッズを買いに来ました。ライブハウスやカフェライブにしか行ったことがなかったので、大きなライブでの勝手を知らない。とりあえず気に入ったものを惜しまず買いました。3万2000円!実質タダ。

大阪からお越しの方にボードとの記念写真を撮っていただきました。このライブのために仕事を休めなかったらやめてもいい主張に同意しました。よいライブを、またどこかでお会いしましょう!


18:00 開場
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一旦ホテルへ荷物を置いてから、本番へ。後ろもすごい人の数だ。世界一のバンドだしアリーナは売り切れるよな~

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ああ!ヨシュアツリー!確かな焦点!これからぼくはU2と思いを共にするんだ!

SS席の特典は、ヨシュアツリーを記念したピックとパッチでした。コレクトカードにはメンバーのサインがあります。ラリーのサイン読みやすいな、とかエッジのピックかっこいいとか、にやにやしてました。

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会場では、世界中の曲と詩が流れていました。
曲では、マイケル・ジャクソン、クイーン、シーア、マーク・ロンソン、各年代のアーティストを幅広く流していました、これ知ってる、これ初めて、と楽しかったです。セットリストないのかな。
詩では、英語の授業で読んだことあるようなものから俳句まで、広くカバーしていました。開催国によって入れ替えているのでしょう。さすが、U2。

The Joshua Treeで追ったアメリカのルーツの入口に、The Waterboysの影響があります。このツアーでも、その代表曲 The Whole of the Moonの出囃子から始まります。2017年のツアーの曲順でプレイリストを組んで延々と聴いてきたので、ばっちり歌いました。ラリー登場のタイミングも予想通り!あー!本物!

完全に悦に入ってるので語り続けますが、このライブってもはやドキュメンタリーショーなんですよ。
U2は、社会問題を提起してきたバンドです。未来を見続けているので、過去を遡ることをあまりしません。そのバンドが30年前のアルバムでツアーをする、それは取り上げた問題が未解決であると認めていることを表します。そのバンドがThe Joshua Treeに至るまでの経緯を、初期の曲から追っていくんです。そりゃ、もう、怒涛のパフォーマンスに違いない、たまらんすよ。

#1 Sunday Bloody Sunday
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ラリーが一人でステージに登場し、サブステージに置かれたドラムセットを叩きはじめます。ずるい!
エッジのイントロ、ボノのコーラス、アダムのポーズ、ッアー!

#2 Gloria
いや、もう、いくら積めばこのイントロのテンションを払えますか。古くからのファンの「おおお!」が印象的でした。
でも、なぜこの曲を選んだのか?その答えはすぐにわかった。

#3 New Year's Day
4人のバンドでこの充実した音ってやっぱりお化けだよなあ。初期でこれだもんなあ。

#4 Bad
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前日に亡くなった中村哲医師へ捧ぐBad。このあと、ボノの呼びかけで会場の照明が落とされ、皆でスマホのライトを掲げて歌いました。U2はぼくらとともに闘ってくれる。ありがとう。

#5 Pride
そしてそのままキング牧師を歌う。「彼の命は奪えてもその誇りは奪えない」

エッジがコーラスする。アリーナがコーラスする。これだよ、ぼくは、右手を挙げて、やりたかったんだ。そして、この時を待ちたかったんだ。あの色を、あの形、あの声を浴びたかったんだ。

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Dr.King.
The time of terror, keep us power.
In time of fear, keep us faithful.
The justice. The joy. To community.


#6 Where the streets have no name
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製作期間の半分がこの編曲に宛てられたほどの難産、しかし、それに値するほどあまりにもぼくらに激情をもたらす曲です。
1分46秒もある伝説的なイントロは、ぼくらをさらします。バイアスを壊し、真の希望を求めに名もなき場所へ共に行こうと問いかける歌詞は、たしかな焦点をもたらします。
それほどに偉大なイントロとともに、赤く染まった空に輝くヨシュアツリーを見るならば、それを涙なしにはいられません。ぼくは、この瞬間、ここにいた全員が感涙したと確信しています。

メンバーがヨシュアツリーの横に並び、ボノが右手を挙げる。行くぞ、と言わんばかりの拳。
内出血しそうなほど握りしめた右手を掲げ、大声で泣きながらU2の一部になりました。

"What's a name of this road...?"
"...It's the eternal road. Go there."

I will go there with you. It's all I can do.

#7 I still haven't found what I'm looking for
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ゴスペル曲。キリスト教では、神を信じれば報われます。生き急がなくても、信じるだけでいい。
ところが、この歌詞には、幾多の高山を登り、幾多の戦場を駆けたとあります。神を信じてもなお、尽力し、ご加護を授かりたい。探しものがまだ見つからないというタイトルは、ご加護を指します。それほどに強く信仰する、根源に迫った曲です。
キリスト教に限定しなくとも、宗教に応じた解釈のできる曲ですから、不変に偉大です。ぼくにとっても指南書です。人生観を完全に変えた曲です。生涯、ぼくを支え続けるでしょう。

殻を打ち破り、勇む心を持ち、もたらすものは、愛です。

#8 With Or Without You
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なりたいロックスターになった自分と妻への愛の葛藤を描いたこの曲。詩的な表現に始まり、次第に大きくなる歌声、言葉は叫びに変わり、遠吠えに似た囁きを経て、アウトロのギターに思いを託す、涙なしには歌えない曲です。

"Sing it harder! Sing with!"

Yes, as always.

#9 Bullet The Blue Sky
政治とU2を強く結びつけるこの曲。エッジの大砲のような音が、強烈に演出し、夢中にさせました。

#10 Running To Stand Still
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薬物を描いたこの曲、ボノの真剣な表情が映し出されたのが印象的でした。本当に同じ場所にいるんだ...

"She is running to stand still...still running..."

#11 Red Hill Mining Town
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炭鉱、労働者階級を描いた曲、当時は本物の労働者によるブラスだったそうですが、これは音楽隊でしょうか?

短いMCで、日本のなにが好きかって話になりました。エッジの「Japanese ceramic」がおもしろかったです。ボノの他にないの?に対して、サケェ...と答え、オチに笑いました。

#12 In God's Country
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"Can I ask you a question?
How many of us consider a home land?
As some kind of left place, you know?
Well, you should be careful.
It's an astonishing thing how quickly a landscape can change.
In the blink of an eye, a landscape can change.
Not just physically...psychological, spiritually...
THIS IS GOD'S COUNTRY.
You know I'm talking about."

景色は瞬く間に物理的にも心理的にも変わりうる。愛する国を守りたければ、立ち上がるしかないのだと知らせてくれる瞬間でした。

#13 Trip Through Your Wires
ボノのハーモニカ炸裂、ああ~かっこよすぎる

#14 One Tree Hill
これ、最後の囁きに似たコーラスがすべてなんですよ。ぼくらに向けてくれるかな、と思っていたら、向けてくれました...

"Oh, great ocean..."
Oh, great sea...
"Run to the ocean..."
Run to the sea...

#15 Exit
吹聴への警鐘を描いた曲。トランプ大統領を痛烈に皮肉る映像が流れ、悪魔に憑依したボノが歌います。リアルタイムにディレイをかけられた映像、U2は常に先進的なパフォーマンスを伝わる形で表現してくれます。あまりの見事な悪魔っぷりに、ボノに対してもはや恐怖すら抱く瞬間でした。

#16 Mother Of The Disappeared
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わずかな歌詞とエッジのスラップ、ああ、ヨシュアツリーが終わっちゃう。ああ、人生の一枚が。

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アリーナ中のコーラスと、輝くヨシュアツリーを従え、演奏を終えたメンバーがサブステージに集ました。ありがとう、なんてこの気持ちを伝えたらいいかわからない、ありがとう。

#17 Desire
はいそうやってすぐ爆発する~そういうとこ~

本編が終わり、アンコールです。

#18 Elevation
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"E L E V A T I O N !"

これ以上どう上がれ言うねんというほど盛り上がりました...本当にみんな好きなんやな~

#19 Vertigo
"Unos!"
Dos!
Tres!
Catorce!

U2って掴みがうまい上に、その期待を超してくるんですよ、たまんね~

#20 Even better than real thing
ついにAchtung Babyから!いよいよU2からの愛が大きくなってきましたね。

#21 You're the best thing about me
アコースティック版、アコギでもエッジの音やな~。

#22 Beautiful Day
All that you can't leave behind、アルバムとしてよく完成されている上に個の曲も充実しているので、ライブのどのシーンに入れても映えますね。

#23 Ultraviolet
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古今の女性活動家を紹介しながらのパフォーマンス。日本人の伊藤さん始め、話題のグレダさんも取り上げられていました。

#24 Love is bigger than anything in its way
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U2が最も主張したい曲だと個人的には思っています。最新アルバム Song of Experience の実質的なトリです。この曲を聴いたときに、もしかしたらU2はこのアルバムを最後にするんじゃないかと思うほど感銘を受けました。「酒なんかじゃない!ぼくは君らが大好きなんだ!」思わず泣きました。U2とぼくらが愛を投げ合う、かけがえのない時間でした。

#25 One
"We're one. But we're not the same."

U2の解散危機を救ったこの曲は、世界中の数々のシーンで歌われました。

集から個へ移る時代、人は自らの足で立たねばならない。多様な意見を受け入れなければならない。規格化された人による透明な意見を重ねるのではなく、多様な人による多様な意見を編集していくことが大切なのです。周りの意見を伺ってばかりではその人の意見は生まれません。日本に限った話ではない、不変の課題であるからこそ、不変の名曲ですね。

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最後の映像にまたしてもやられてしまいました。

ぼくはもう死んでもいい。ありがとうU2。
もちろん死なない。これからも自分のために闘おう。

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終演後、席で呆然とし、隣の方と同時に「死んでもいい」と発して笑いました。ですよね。
会場を後にすると、通路で昼に写真を撮っていただいた方とばったり会いました。驚くような偶然です。またどこかでお会いしましょう!

翌日もセットリスト通りのプレイリストを聴いて余韻に浸り続けました。ありったけの愛をU2からもらった分、ありったけの力を示そう。強く進もう。
茨の道から、約束の地へ。