あけましておめでとうございます。けーごです。
みなさん、SUPER GT 2020 最終戦 富士300km、見ましたか?しびれましたね。チーム国光を応援して良かったです。レースをご存知ない方、まずはこの動画をご覧ください。
❏ チーム国光の躍進はル・マンから
チーム国光は、全日本GT選手権に初年度から参戦している老舗です。RAYBRIGがタイトルスポンサーを初めて勤めたのは、1996年のルマン24時間です。特徴的なレイブリックブルーをまとって参戦し、GT2クラス3位で完走しました。
そこでふと思うわけです。耐久レースをしたい。RAYBRIGカラーを初めて身にまとったNSXに再び勝利を届けたい。
わが心のル・マン28年史 その17 1996年第一話。「チーム国光NSX、孤高の完走」 | 高桐 唯詩/Takagiri Tadashi わが心のル・マン28年史
1996年のルマンは、市販車ベースのGT規定を採用していました。マクラーレンF1 GTR、ポルシェ911 GT1が代表的な車です。チーム国光はNSX GT2にて参戦していました。
現在、GT1・GT2規定は存在せず、GT3、GT4規定が主流です。過去のGT規定との違いは、接戦になるよう車両に性能調整を施していることです。
GT SPORTにもGT3、GT4規定の車両は収録され、ゲーム内ではGr.3、Gr.4としてクラス分けされています。現代のGT3車両は、往年のGT1車両と同等のパワー、同等のタイムで走行できます。GT4車両はルマンに出場していないので、往年のGT2規定に合わせることもできます。また、GT SPORTではレース条件を幅広く設定することができます。自車だけ異クラスでも出走できます。
そこでふと思うわけです。GT4でGT3と走ればルマンじゃん。
早速、NSX Gr.4を1996年のRAYBRIG NSX GT2にリバリー変更します。gotty_11523さん、拝借いたします。
❏ サルト・サーキット
開設:1923年
全長:13.626km
コーナー:21箇所
サルト・サーキットは、常設区間と非常設区間(公道)で構成されたルマン24時間用のサーキットです。全長6kmを3分割した名物直線ユノディエール、コーナリング性能を試すインディアナポリスやポルシェなどを抱える高速サーキットです。公道部分はグリップが低いため、丁寧にライン取りをしないと簡単にコースオフします。見た目以上に奥深いコースです。
❏ セットアップ
1996年 ルマン GT2クラス規定
出力:420PS以下
重量:1050kg以上
NSX GT2は、NSX Type Tをベースに燃料マッピングの変更と軽量化を施して参戦していました。1996年マシンは410PS。車重は不明でした。GT2マシン 1050kgとして、Type T 1350kgより-27%の重量です。
NC1型NSXは、重量1800kg。ハイブリッドシステム撤去と軽量化で-25%と仮定してGr.4では1360kgとしました。奇しくもデフォルトと同じ値でした。出力は420PSにします。ギア比はユノディエール 第一シケイン手前でレブに当たるようにセットアップ。
足回りは、フロントのトーだけ-0.27°に変更。ぼくは、コーナリング姿勢をバッチリ決めて固定Rでコーナリングするのが好みなので、ロール感のわかりやすいノーマルの足回りで十分でした。
❏ レース条件
どうせルマンを走るなら、現実味のあるレース条件にしたい。そこで、ルマンの規定をいくつか調べました。
GT SPORTでは、燃料満タンでもサルト・サーキットを15周できてしまいます。これでは規定を満たさず、また作戦の幅も狭くなります。GT SPORTでは、タイヤと燃料の消費スピードを変化させることができるので、今回は実際の2倍早く消費する設定にしました。ドライバーの最大連続運転時間が4時間のため、今回のレースでは4時間耐久とします。
その他の設定は、できる限り本物のルマンに近くなるようにしました。目指すは優勝。がんばります。
❏ 練習走行
GT SPORTでは、レーシングタイヤは4種類、燃調は6段階設定されています。最も速いのはスーパーソフト×燃調1、最も遅いのはハード×燃調6。燃調を大きくすると燃費が向上する代わりに出力が低下します。
柔らかいタイヤを選んでも数周で使えなくなるため、ピットが増えます。タイヤ交換・燃料満タンで35秒消費するので、柔らかいタイヤでの合計走行時間が他の固いタイヤでの合計走行時間より短くなければ作戦成立しません。
柔らかいタイヤでの作戦での懸念点
・ピット明けの自車位置によってはターゲットタイム未達
ルマンは直線が長いため、最高速に寄与しなければコーナーでの他車処理のリスクが増える
・他車処理で想定よりタイヤが減ってターゲットタイム未達
クリーンラップを走れる保証はない
❏ 作戦
ターゲットタイム:4:14.500
スタート:ソフト×燃調2 予定周回9周
ノーマル:ハード×燃調1 予定周回8周
アタック:ソフト×燃調1 予定周回7周
スタート時は燃調を変えて出力を落とします。集団をかき分けて接触するリスクを避け、他車とのピットタイミングをずらすことが目的です。これでクリーンラップを確保して、ピット作業で他車を抜かす作戦です。ソフトタイヤなのでコーナーでタイムを詰めて、ターゲットタイムを達成する目論見です。
基本スティントはハードを選択し、ハードタイヤはダブルスティント(2スティント同じタイヤで走り続ける)でタイヤ交換の時間を短縮します(6秒)。ターゲットタイムは揃えているので、安定して走行すれば自ずと上位になるはずです。
長い給油時間を少しでも削るために、ショートシフトで燃費走行をします。NSX Gr.4の出力特性図を見ると、7200rpm付近で420PSを迎え、以降はトルクが下がります。高回転域ほど燃料を消費するため、必要最低限の回転数で最大出力と加速を得る必要があります。7200rpmは、レッドゾーン直前であることがドライビングモニターからわかったため、黄色インジケーター2個ついたらシフトすることにしました。少しでも勝つ要素を多くしよう。
❏ 参戦車両
#1 BMW M6 GT3 M Power
#101 BMW M6 GT3 Walkenhorst
優勝候補筆頭、BMW M6 GT3。めっちゃ速いです。カラーリングの異なる2台体制です。
#54 LEXUS RC F GT3
#36 TOYOTA FT-1 VGT
#90 TOYOTA GR Supra Racing Concept
トヨタは3台体制。コンセプトモデルのレース仕様が存在するのはグランツーリスモらしくて好きです。
#28 Audi R8 LMS
#35 Mercedes SLS AMG GT3
定番のGT3ももちろんいます。ノーマルのR8 LMSはオーバーステアが強い印象がありますが、セットアップは改善されているのでしょうか。
#4 Ford GT LM SpecⅡ Test Car
#59 McLaren F1 GTR
往年の名車もいます。下調べがてらマクラーレンF1で走ったところ300km/hに軽々到達して引きました。ぼくのNSXのセットアップは275km/hで頭打ちなので太刀打ちできません...
#123 Nissan GT-R GT3 Schulze Motorsport
N/A MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT
話題となったRX-VISION、ロータリーサウンドがたまりません。高回転域の伸びがよく、この車相手にブレーキング勝負に持ち込むのも一苦労です。
他にもグランツーリスモ用に企画・収録された独自のレーシングカーが各メーカーから登録されており、シトロエン・ルノー・プジョーなど、GT3を持っていないフランス陣も参戦しています。豪華な布陣の今レース、1台だけ下位カテゴリのNSXは優勝できるでしょうか。
❏ 決勝
LAP 1 コントロールライン
15時、決勝スタートです。ポールポジションはM6。ぼくがスタートした頃にはすでにダンロップを過ぎており、20秒ビハインドからの追い上げです。
LAP 1 ユノディエール
テルトル・ルージュの進入が他車より抜群に速いので、3台16位でユノディエールを駆けます。が、初めは燃調2のため最高速が伸びません。スルスルと両脇から交わされてしまいました。わしゃリカルド・ゾンタか。
LAP 1 ポルシェ
1周目ポルシェカーブにて、コースアウトしました。ポルシェカーブは幅方向の断面が凸型になっており、コーナー内側のラインをべったりと張り付いて走る必要があります。ところが、進入で凸の頂点部分になってしまい、荷重が乗らないまま外側に膨らんでコースアウト。ソフトタイヤの長所をコーナーで活かすべく、ブレーキングポイントを少し奥にしたことが失敗でした。
まだあと4時間あります。ここから挽回しましょう。
LAP 6 フォードシケイン
順調に周回を重ね、フォードシケインにて16位へのオーバーテイクの瞬間です。フォードシケインは主なオーバーテイクポイントでした。
LAP 11 インディアナポリス
他車は7周、8周でピットに入ります。ぼくは初めは9周で入り、そこから8周ずつのスティントです。リズムよく走り、中盤を快走します。
LAP 17 インディアナポリス
7周・8周スティントの車は2回目のピットを終え、快調に飛ばしていきます。他車の多くはソフトタイヤを選択しており、ミュルザンヌの立ち上がりは鋭いです。フォード2台に抜かれますが、焦らずインディアナポリスを抜けます。
LAP 17 ポルシェ
ところが、ポルシェ進入にてジャガーがアウト側に無用に寄せてブレーキングしてきました。接触を避けるべくブレーキ踏んで左に回避しましたが、左側はグリップの少ない路肩。あっけなくグラベルトラップへ突っ込み、15秒失いました。ストレートでもやけにスペース残してくれないと思っていましたが、これでジャガーが嫌いになりました...笑
LAP 19 ユノディエール
文句を言っても仕方なく、フラットスポットを作ったタイヤではスティント後半に響いてしまうので、ハードタイヤに履き直して飛ばしていきます。
LAP 22 ユノディエール
鬼門だったマクラーレンに追いつきました。ストレートでは敵いませんが、ブレーキングで詰めていきます。第一シケインで並びましたが立ち上がりで離され、追い抜きはメゾン・ブランシュ(フォードシケインの一つ前)までかかりました。
ちなみにこのマクラーレン、この年にマクラーレンが予定していた参戦車両4台にはなく、上野クリニックがスポンサーをしたいから出してくれと頼み込んでしぶしぶ5台目の参戦車両を用意してもらったんだとか。その車が優勝するんですから、ルマンは本当にわからないものです。
LAP 24 ダンロップカーブ
残り2時間10分、ついに3位のGT-Rを捕らえました。この時点で先頭2台のM6とは1分差。コース1/3先にいます。まだまだかかるな。
LAP 31 テルトル・ルージュ
ターゲットタイム通りに周回して、毎周2秒ずつ削っていきます。周回遅れもまだおらず、クリーンラップが続いてリズムよく走っていました。
LAP 41 ユノディエール
ピットの入れ違いではありますが、先頭が見えてきました。ピット作業分の35秒があるので、この時点で実質35秒差があります。まだまだ15周かかります。先は長いな...
LAP 44 ミュルザンヌ
ユノディエール第二シケインで周回遅れのシトロエンをかわして、ミュルザンヌへの進入時、シトロエンがイン側から突っ込んできました。お前周回遅れだろ!?なんで前と勝負するんだよ!?しかもイン側のさらにインじゃねえか!?
メカニカルダメージは強めに設定してあるので、走行が困難になる壁へのクラッシュは絶対に避けたい。必死にグラベルに突っ込むように回避して、なんとか脱出。20秒失いました。これはかなり痛い。
そして、さらに痛かったのは、このときに残り時間を把握していなかったことです。運転中はレース情報を一切表示しない設定にしていました。加えて、長時間運転するとPS4がフリーズするトラブルがあります。このレースはすでに収録3本目で、1本目は6時間耐久の残り30分でパー。2本目は4時間耐久で残り1時間でパー。コンティニューボタンを押すとフリーズする場合があったため、あまり押したくなかったのです。
もしこのとき残り時間を把握していれば、すぐにソフトに履き替えてファステスト連発で追い上げればすぐに挽回できました。しかし、このときまだあと1時間半はあると思っていたのです。このとき、ステイアウトして同じリズムで走り続けることを選びました。果たして間に合うのか...
LAP 51 ユノディエール
ようやくトップに追いついてきました。ここで、残り時間を概算し始めます。1周4分だとしても4時間で割ったら60周か...?あと10周もないのか...?あ、え、今追いついてるけど、ピット差の35秒負ける可能性があるのか...?
状況がやばいことにこのとき気づきました。なんとかして前へ出なければ。そのときです。
LAP 51 ポルシェ
ミュルザンヌにてブレーキを詰めたところ、前の458に軽く追突してしまいました。メカニカルダメージがなければなんてことないんですが、強いといろんなパーツが壊れます。ここでは、リップスポイラーが壊れました。やけにフロントが食わなくなりましたが、なんとか凌げると考えていました。
ところが53周目、ポルシェでいよいよ堪えられず、コーナーで膨らみ始めます。ストレートも明らかに伸びなくなりました。最終手段に、スーパーソフトを履きにピットへ。
もうフリーズしてもいいからとピット明けに時間を調べると、残り7分。あと2周...!?ピットの差があるのでまだ35秒差あります。残り2周で逆転するにはターゲットタイムより-18秒の、3:57.000で周回する必要があります。これはGT3車両でミディアムで飛ばしたタイムに匹敵し、GT4車両では明らかに間に合いません。この瞬間、はっきりと負けを認識しました。いいや、これもレースだ。あのときもう少しラインを残さなかった自分のミスだ。マシンを持ち帰ることに集中し、スーパーソフトはおまけ程度に走ろう。
LAP 56 コントロールライン
❏ リザルト
完敗でした。自分のミス、他車の接触、残り時間、すべてを避けることができました。耐久レースの基本は、マシンを持ち帰ること。目先に焦るのではなく、もっともっと俯瞰した視点でレースをコントロールしなければいけませんでした。
❏ 改善
・予想周回数を把握
スティント平均ラップタイムは練習で測れたはずでした。これが痛かった
・第1スティントはミディアム×燃調1
耐久だからといって後ろに下がってクリアラップを待つのではなく、前に進んでクリアラップを取りに行かないと先頭とのタイム差は取り返しのつかないほど広がる
・中盤スティントをミディアム×燃調1
コンスタントに詰めるのではなく、スパートをかけるスティントを用意してできる限り早めに先頭への勝負権を持っておく
・ラインは十分に残し、確実に抜けるところまで待つ
他車が前後を見ているとは限らない
結局、焦らず速く走るというごく当たり前の教訓を得ました。練習走行でスティントの作戦を立てたのは良かったですが、詰めが甘かったです。ドライバーとしてもレースエンジニアとしても十分な仕事じゃなかったな...
週末を通してレースを組み立てる方法を実践して、本物のレースのレベルの高さを痛感しました。セットアップから何からやりつつ、タイヤの持ち、燃料の持ち、平均ラップタイムの計算を済ませておくのは一度にまだこなせません。ゲームとはいえ、本番さながらの緊張感があって面白い。コンピューター相手でも予選とかできたらもっと楽しいでしょうね!
レースの勉強をしたら、今年のレース観戦がますます楽しみになりました。
では。