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TRAIN SUITE 四季島で新婚旅行をしてみた

 

こんばんは。けーごです。

 

昨年、結婚しました。さて、新婚旅行をどうしよう。

 

妻は国内旅行をお望み。なにで旅をしよう。飛行機は野暮ですし、船旅は港町しか味わえない。車では日本縦断で駆け巡っている。もっとアクティブなバイクでは積載少ないし、自転車や徒歩では旅に足る体力が妻にはない。そうだ、鉄道で旅に出よう。

鉄道で長旅といえば、青春18きっぷなどのフリー切符を使った周遊が代表的。鈍行列車も旅情がありますが、日本ではしまかぜなどの乗車を目的にした観光列車が数多く運行されていて、選り取り見取り。せっかくなら、その最高峰の旅をしてみようじゃないか。ということで、ふたつの企画を立てました。

① 鉄道日本縦断
  JR最南端の西大山駅から最北端の稚内駅まで、列車を乗り継ぎ北を目指す旅。特急宗谷の車窓から見るサロベツ越しの利尻富士はロマンに溢れそうです。

② TRAIN SUITE 四季島で東日本回遊
  日本最高峰の列車へ。3泊4日の東北・北海道をスイートルームで過ごすクルーズトレイン旅です。

 

❏ 四季島を知る

クルーズトレインは、客室で過ごしながらあちこち走る列車です。クルーズ船 飛鳥の鉄道版がイメージしやすいでしょうか。

そんなクルーズトレインのパイオニアとして、観光列車を日本に流行らせたななつ星 in 九州があります。九州7県を存分に楽しんでもらうべく、3泊4日130万円という桁違いな価格で最高のおもてなしを受けるJR九州の列車です。博多から鹿児島を目指すルートと長崎を目指すルートがあります。現代で新造する客車の豪華絢爛さに驚き、これを一目見ようと学生時代に18切符で由布院へ行ったものです。

JR西日本では、TWILIGHT EXPRESS 瑞風が運行されています。かつて大阪から夕方の日本海を眺め札幌へ駆けた寝台特急から襲名し、京都から山陰・山陽を走り中国地方を周遊する列車です。10両編成のシリーズハイブリッド車で非電化区間も走行できる仕様です。特筆すべき点として、後尾車両ではデッキに立て、風を感じながら手を振ることができます。温もりに溢れた発車シーンは、旅情の権化とも言えましょう。

 

これら高級クルーズトレインの最高峰に、JR東日本のTRAIN SUITE 四季島があります。日本の古い国名 敷島 にちなみ、「深遊 深訪」をテーマに仕立てられた列車です。東日本の広大な鉄道網を活かした豊富なプランが展開され、最も雄大なものは3泊4日で上野~登別を日本海周り・奥州街道沿いに回遊します。

四季島の車両は技術的にも興味深く、日本のほぼすべての路線を走ることができます。具体的には、DC1.5kV、AC20kV(50/60Hz)、AC25kV(50Hz)の4種類の電化区間に対応しながら、シリーズハイブリッド車にもなって非電化区間も走行できます。線路幅さえ合えば、ローカル線から新幹線まで走行可能な、世界で最も複雑なパワーユニットを持つ車両です。実際には、信号設備の違いや駅に収まらないなどで走れない路線もありますが、多くの路線を走ることができるのは事実です。

なぜそんなに複雑な電源が必要なのでしょうか?それは、日本の鉄道の歴史に関わりがあります。

ここに、鉄道路線の地図を作りました。便宜的に、JR東日本の路線を細かく記載しています。

都市には直流が多い。車両を安く作れるからです。一方で、変電所が多く必要で設備が高くなります。需要の大きな地域では安く車両を作れたほうが嬉しいので、直流が使われます。

都市から離れると交流が増えます。車両に変電所を載せる考え方です。設備が安くなる代わりに車両が高くなります。関東と関西の電力会社がそれぞれ輸入した発電設備の周波数が異なった経緯で、50/60Hzの違いがあります。また、新幹線では大きな電力が必要です。電圧を上げると相対的に少ないロスで大きな電力を得られるので高電圧な交流を使います。

そして、需要が少なければそもそも蒸気機関車のままでよかったので、電化されていません。このようなコスパ都合と歴史的経緯と技術的理由で、4つの電源がいるのです。四季島は広大な東日本を走るために作られた凄い車両なのです。JR東日本の威信を感じます。せっかく日本を鉄道で周遊するなら、広い大地を走る四季島に乗りたい!

 

❏ 四季島に乗りたい

しかし、四季島に乗るのは簡単ではありません。切符をみどりの窓口で買えるわけではなく、抽選を当てなければならないのです。10両編成に乗れるのは17組。しかも倍率はなんと6倍。これ、当たるんか?

なので、新婚旅行は当たれば四季島、外れれば鉄道日本縦断にしました。

 

2025年夏の応募は、2024年11月下旬に受け付けられます。応募時に、希望出発日を3種類、客室グレード(スイート、デラックススイート、四季島スイート)、2日目の宿(登別温泉、支笏湖温泉)、3日目の観光ルート(宿場町見学とうちわ作成の黒石ルート、三内丸山遺跡見学の縄文ルート)を選択することができます。台風や豪雨のリスクを考えて、梅雨明け直後の7/7出発を第一希望としつつ、他はどちらでもよい選択にしました。内心は支笏湖温泉・縄文ルートの組合せを希望していましたが、当たる確率を優先させました。

当落結果は2025年2月上旬に郵便物にて発表されます。さあどうなるでしょうか。

 

 

一発で当てました。爆運でした。やっほー!

 

箔押しの手紙を開くと、当選結果と今後の案内が記されていました。コースは支笏湖温泉・縄文コース。願ったり叶ったりです。手紙も箔押して。すごない?

2月中旬に、電話にてツアーデスクよりご挨拶と今後の予定の確認がありました。その後3月に別送された案内には、前金の振込案内の他にも返送用紙が入っていました。記載内容は、アレルギーの有無や旅への思いなどの記入欄の他にも、アニバーサリーケーキなどのオプションや前泊・後泊用の東京ステーションホテルの案内もあり、具体的な旅の準備も始まります。

せっかくの新婚旅行なので、アニバーサリーケーキを注文しました。メッセージ内容はシェフおまかせ、喫食時間は1日目午後であれば指定できます。私たちは14時30分頃にしました。

2025年夏の3泊4日コースでは、1組180万円弱します。鉄道では想像を絶する価格ですが、敷かれている体制や丁寧なおもてなしを考えれば妥当ではないか?と思い始めました。

 

6月中旬には、行程表やタグなどが入った最終案内箱が届きます。荷物を事前にツアーデスクへ送ることもできます。ロゴ入りのバゲージタグ、マセラティのインパネかと錯覚する手触りの良さ。え、この行き届いた気配り、なに?現?

他にもギフトカタログが同梱されており、四季島オリジナルグッズを見てはムフフな時間を過ごせます。グッズは四季島HPから注文もできますが、HPとカタログでは一部取扱い商品が異なります。現地でしか購入できないものもあるので、友人へのお土産は事前に聞いておくと良さそうです。

すでに圧倒されています。乗ったら緊張するんでしょうか。初日のディナーはドレスコードもセミフォーマルと指定されていますし。私はスーツと革靴を新調し、妻はドレスを買いました。浮ついた5ヶ月はあっという間に過ぎました。

 

❏ 四季島に乗る

7/6 0日目

ついに新婚旅行の始まり。まずは前泊のために上京します。初日はすみだ北斎美術館と上野の森美術館で浮世絵を鑑賞しました。街道巡りをきっかけに浮世絵に興味を持ち、ドラマ効果のおかげで多くの展示会が開催されていて嬉しいです。その後、上野東照宮で旅の安航を願いました。

 

上野駅へ戻り、明日の下見をします。夏の四季島は、1週間のうち月~木を3泊4日コース、土日を1泊2日コースで運転しています。日曜は1泊2日コースを終える四季島が上野駅に来るので、お迎えすることにしました。

四季島へは、新たな旅立ちの13.5番線から乗車します。四季島に乗る人だけが通ることを許されるホームです。

左隣の13番線は、北へ向かう寝台特急がかつて発車していた、旅立ちを象徴するホームです。四季島が入線する時間帯では、13番線に一般客は立ち入れません。また、右隣の14番線にも目隠し用の列車が入線するため、四季島を眺められるのはホーム先端部分のみになります。四季島の演出は徹底して守られていることがうかがえます。

 

四季島ゴールドが輝いています。明日はこれに乗るんだ!

 

7/7 1日目 上野→青森

1日目は、北を目指します。

切符のない四季島に乗るには、中央改札に設けられた専用通路からアテンダントを通して専用ラウンジ PROLOGUE 四季島 へ案内いただきます。すでに地に足はついていません。

 

PROLOGUE 四季島で振る舞われたのは、運行5周年を記念してブレンドされたお茶のシャンパン。四季島のように輝く金色は、茶葉や花の香りを豊かにまとわせて心を潤してくれます。気分の高揚はまるでコンコルド。

レセプションでは、食事の量やアレルギーなどの最終確認やクルー紹介が行われました。アテンダントの多さもさることながら、車掌が2名いること、カメラマンも同行するなど乗務員の盤石さに驚かされます。今回の旅で乗るの28名ですよ。マジ?

 

静かに、ゆっくりと入線する四季島。気分が優勝しすぎて、表彰台にいる気分です。もうお茶のシャンパン飲んじゃいましたけど。

接客以外のスタッフにも四季島専用の制服があるようです。あれ、この制服で稼働するの、搬入の20分だけですよね。。?すでに四季島専用の制服を召したスタッフを30名はお見掛けしています。事の大きさに気づき始めました。

 

四季島は、北へ誘う伝統の線路から、私たちを新たな旅へと導きます。発車標には行先は記されず、出発だけが示されます。言葉のひとつひとつにこだわりが感じられます。

 

四季島、四季島だよ。
四季島、四季島だよ。

 

乗車には、1組ずつ案内されます。新たな旅立ちの13.5番線への扉が開かれ、ホームを歩いていきます。ライトアップされた四季島、天井から照らす四季島ロゴのライト、高揚が成層圏を突き抜けていきます。

 

「えっぐ!」

IQ2しか持ち合わせない自分からひねり出せる言葉はこれだけ。えぐい。四季島への唯一のドアの前にはレッドカーペット。えぐい。いま、四季島へ乗り込むこの瞬間は、私たちだけの時間。特別な気持ちにさせてくれます。乗り込むとピアノの演奏が。えぐい。

 

大勢の上野駅員が立ち並ぶ中、八点鐘が響きます。先頭10号車のテラス いぶき から手を振り合いながら、四季島は旅立ちました。

 

運転席の展望も絶好です。

 

車掌と会話を楽しむうちにランチになりました。6号車ダイニング しきしま でいただくのは、銀座の割烹「六雁」による四季島のためのコース。蒸し鮑の椀物の研ぎ澄まされた出汁が特に好きでした。銀座のお店にも行きたいです。

六雁|MUTSUKARI|銀座|日本料理

 

谷川岳を望みながら上越線を北上します。客室のコンポからフュージョンをかけて、心地よい車窓を堪能しました。

 

上越線といえば清水トンネル。川端康成『雪国』の有名な書き出し「国境の長いトンネルを越えると雪国であった」のトンネルです。清水トンネルは上下線で分かれていて、舞台は単線時代の上りトンネルになっています。同じ体験はできませんが、下りトンネルのほうが長く、別の理由でもおもしろいので魅力は増していると思います。

その別の理由とは、トンネルの中の駅です。谷川岳を貫く清水トンネルの下り線では、中に湯檜曽駅と土合駅があります。土合駅は特に有名で、下りホームから改札まで486段の階段を上らなければいけません。改札入ってホームに着くまで10分かかる、特異な駅の代表格です。

 

トンネルを抜けても夏模様。越後湯沢を越えて魚沼の車窓を彩るのは巻機山です。

 

このとき時刻は14時30分。アニバーサリーケーキの時間です。魚沼の山々を見ながらケーキを食べたかったのでこの時間にしました。

シェフおまかせのメッセージは、"Partir en lune de miel" 新婚旅行への旅立ちでした。つくづく、素敵なおもてなしです。

 

途中の小出駅では、魚沼市観光協会のお出迎えとともに地酒の試飲を楽しみました。編成も撮れるうちに撮っておかねば。2階建て相当の大きさを感じさせない秀逸なデザイン、さすがピニンファリーナやフェラーリのデザイナーを務めた奥山清行氏です。

 

車内を散策すると、5号車のラウンジ こもれび では紙風船の制作体験が催されています。新潟県の伝統工芸品なんですね。初めて知りました。

 

ラウンジにはバーもあります。ジャパニーズはばっちり揃い、夜のバータイムが楽しみですの~。

 

ラウンジの暖炉には、四季島のカードがありました。横にはスタンプもあり、ちょうどカードに押せる大きさです。四季島の車掌しか持っていないカードもあるとカメラマンに教えていただきました。車掌印もあるらしく、後尾車両の1号車テラス きざし へ行くと、自分で押させてもらいました。本物を触る貴重な経験です。

四季島の車掌は、特定の支社や運輸区に所属するのではなく、TRAIN SUITE 四季島車掌区としてJR東日本 鉄道事業本部直轄の部署に所属します。希望すれば異動できるとおっしゃっていましたが、きっとそれだけではないことは容易に想像できます。

このカードのデザイン、季節ごとに変わるんだとか。カメラマンは四季島の運行開始当初から担当されており、コンプリート中だそうです。もう手に入れられない他のデザインも、いくつか譲っていただきました。嬉しいなあ。

 

スーツに着替えてディナーへ。1日目のディナーは、TRAIN SUITE 四季島 総料理長による東北の食材をふんだんに使ったフレンチのフルコースです。郷土料理から発想したり食材の特徴を活かした料理が振る舞われる中、外を飾るのは夕陽の笹川流れ。日本海沿いの路線で最もよい車窓です。最高の景色に最高の食事、東北のショーを堪能できる素敵なひと時でした。忘れられない車窓です。

カメラマン撮影

 

少し鉄オタ目線で四季島の凄さを話します。素晴らしい旅になることは、行程から十分に伝わっていました。そのうちに、直接には伝わってこない配慮が気になってきました。具体的には2つ。

・食事中は速度を落とすのだろうか?
・食事中はすれ違い待ちしないのだろうか?

列車で食事をする。この優雅な時間を最大限に味わうには、揺れないことと停まらないことが大事なのではないか。そこで気になるのが、実際のダイヤです。四季島の時刻表は調べられるので、ある程度の予想ができます。時刻表をダイヤグラムに起こしてみてみました。

まずは上野から長岡までの高崎線・上越線。ダイヤグラムの見方は、左から右へ時間が進み、上から下へ列車が進みます。傾きが縦になるほど速く、横になるほど遅い。交差するところは追越しが生じます。

赤線:四季島
黒線:普通
青線:快速
緑線:特急
紫線:貨物

四季島は食事をゆったり楽しむために、普通を抜かず、快速や特急にも抜かれないダイヤになっているだろうと。その通りで、ランチをしていた大宮~高崎では淡々と走っているダイヤでした。一方で乗務員交代の時間を確保しつつ後続を邪魔しないように出発する気配りがわかりました。なるほど、すごい。

もっとすごいのが新津~秋田の羽越本線。この区間には単線と複線が入り交じります。下から上に向かう線がすれ違う列車です。すれ違うには駅で待つか、青色で記した複線の間にする必要があります。加えて、夕陽を笹川流れで見ることは予想できたので、オレンジで記した時間帯に村上~鶴岡を走っているはず。

速すぎず、遅すぎず、すれ違い待ちをしない、すれ違い待ちをさせない。予想ではすべての列車と複線区間ですれ違います。ディナー中の2時間半、本当に一度も止まらずにすべての列車と複線区間ですれ違うことなどできるのか?

本当でした。揺れない心地よい速度のまま、すべての列車と複線区間ですれ違いました。ダイヤ作成部門にとって一番の腕の見せ所になると思っていましたが、本当にやり遂げていることに感心しきり。ほんまにえぐいわ。針の穴を通す難易度ですよ。

私たちが夕焼けのディナーを楽しむための配慮は、JR東日本の執念を感じるものでした。

 

四季島は、22時前に秋田へ着きます。秋田駅では四季島のためにお土産屋が特別に営業いただいています。駅員も数多くお出迎えいただきました。こんな時間よ?そりゃ買い込みますよ。乗車前にはあきたこまち1合分のお米をいただきました。えぐいて。秋田駅の皆さん、夜遅くにお出迎えいただきありがとうございました。

 

ディナーが終わると、23時30分までラウンジでバーが始まります。夜食もあります。山崎でほろ酔いになったところでキーマカレーとラーメンをいただきます。シェフからどれもおいしいとうかがったのでモリモリ食べます。食べてばっかりですが、コースも夜食も量はほどほどに調整されています。香りがそそるカレー、夜食にちょうどいいしょうゆ、どれもおいしかった!

 

7/8 2日目 青森→白老

2日目は、夜中の青森から北海道へ向かいます。奥羽本線から海峡線へ入るには青森で方向転換が必要なのですが、10号車を先頭にするために青森信号場・青森駅で方向転換します。北海道新幹線用の無線機を積むのが10号車だからだそうです。

青森信号場では停車する着回し線の一部が非電化のため、一時的にエンジンで走ります。運転士の移動やエンジンの入切など、青森駅周辺で小一時間かけて方向転換していました。貨物みたいに東青森で方向転換するのも物理的には可能だと思いますが、貨物線に影響されないダイヤを考慮してこうなっているのでしょう。

 

4時前に蟹田駅でJR東日本の車掌からJR北海道の車掌へ交代します。交代を見届ける乗客は初めてだとか。旅路をともにする方へは最後まで挨拶したいものです。3日目の夜から再び合流するので、それまではJR北海道の車掌のお世話になります。

 

青函トンネルを抜けると朝でした。青函トンネルを現役車両で前面展望できるのは四季島しかないので、先頭車テラスは多くの人で賑わいました。こんな早朝からすごいですね。2時半から方向転換見てた自分がいうのもなんですけど。

 

函館は8番線。寝台特急が止まるのも8番線でした。名門を感じさせます。

 

函館では、朝市を散策した後に、料亭「冨茂登」で朝食をいただきました。いかソーメンをはじめとした海鮮のオンパレード。朝日の差し込む庭の景色も良く、贅沢な朝食でした。

函館【冨茂登】 - FUMOTO

 

その後、函館山の麓をバスガイドいただいて、函館市電の貸切に乗ります。1950年製の函館市電最古参、四季島のサボもついています。市電に乗るのは函館どっく前から函館駅前まで。短い時間ですが、嬉しいサプライズです。

 

函館駅に戻って2日目の旅立ちを待ちます。四季島が出発する前、八点鐘が鳴らされます。カメラマンのご提案で、函館駅の出発は私たちにやらせてもらえることになりました。いいんすか!?函館は結婚を心に決めた大切な場所。この函館で旅立ちの鐘を新婚旅行で鳴らせることは、巡り合わせでしょう。またひとつ、函館が特別な場所になりました。

 

駒ヶ岳が今日もよく見えます。北海道での車窓のハイライト、四季島からの眺めは格別です。ダイナミックで素晴らしいですね。私たちの客室は903で最も10号車に近かったので、景色のいいところはテラスから眺めていました。

 

カメラマン撮影

2日目のランチは、北斗市のフレンチ「climat」によるコース。「あたりまえを繰り返すとあたりまえじゃなくなる」を軸に、道南の食材・食生活をフレンチに昇華する取組みをされています。私はコース料理に馴染みがなかったので構えたくなりますが「この鱒を食べて育ちました」の一言が添わると親しみも湧くもの。「越冬大根」「ひこま豚」「キャベツ」、他にもメニューひとつひとつの名前も料理も粋で、ストーリーが浮かびます。食事を介して、四季島から地域の生活を垣間見るランチでした。

climat|tete hokuto

 

噴火湾に沿ってトコトコ走り、気づけば白老。国立アイヌ民族博物館 民族共生象徴空間 ウポポイ を見学します。コタンと呼ばれるアイヌ民族の伝統的な家で、アイヌ民族の衣装や楽器 モックル をデモンストレーションいただきました。このコタンは建築基準法に適合させたため実際のサイズとは異なるようです。実際のコタンは、愛知県犬山市の野外民族博物館 リトルワールド にありますね。

スタッフはアイヌ民族で、アイヌ語のあだ名で呼び合うのだそう。名乗りは出自の開示に直結しリスクのためあだ名で呼び合うのがアイヌ文化だと教えていただきました。アイヌ語のかしこまった挨拶は節に乗せた口上らしく、驚きました。普通にウポポイに来ただけでは短い時間でこんなにも学べなかったように思います。

 

モックルは竹と口を使った楽器で、紐をピンと張ったときの竹の振動を口に伝えて音を増幅させて聴かせます。口やのどの形を変えると音色が変わります。原理がわかったのでやってみたら1分で鳴りました。でも継続して音色を変えていくのは難しかったので、練習ですね。

 

アイヌってなに?を深められる展示がされていました。アイヌ語の文法をクイズで学ぶコーナーもあり、全問不正解でした。日本語や英語の文法とも異なり、もっと勉強してみたいですね。アイヌ語は状態を表現することが多いように感じます。そういう言葉のつけ方、日本語にはない文字(ト゚、ㇰなど)の発音方法や由来も知りたいです。次は丸一日かけて訪れてみたいですね。ずっと来たかったので楽しめました。

ウポポイ(民族共生象徴空間) NATIONAL AINU MUSEUM and PARK

 

2日目の夜は、支笏湖温泉 星野リゾート 碧の座 に泊まります。四季島は車両整備のために手稲へ回送されます。露天風呂でたっぷり温泉につかって爆睡しました。

 

7/9 3日目 洞爺→盛岡

朝の支笏湖畔が気持ちいい。3日目は、洞爺から四季島に乗って青森を目指し、南下の車中泊です。

 

ウポポイから支笏湖温泉と登別温泉でバスが分かれたので、四季島に乗る駅もそれぞれ異なります。支笏湖温泉泊は洞爺から。今日も噴火湾は綺麗です。

 

カメラマン撮影

3日目のランチは、札幌のフレンチ「Moliēre Cafē 降っても晴れても」のコース。ランチが始まった長万部では、駅弁 蟹弁当が有名です。で、「毛ガニ」と題された料理。なんだろうと期待してサーブされた料理。クローシュを取ると蟹が!泡吹いてる~!気絶してる~!あ、食べれるんですね、はい。料理は目でも楽しむものなんだとこの連日のコースを通して学びます。最後は巨大なミルフィーユをその場で切り取っていただきます。今日のミルフィーユは綺麗な形のようで、クルーもアタリですね喜ばれていました。いやあおいしかった!

Moliere Cafe モリエールカフェ 降っても晴れても

 

新函館北斗で黒石コースと縄文コースに分かれます。縄文コースは四季島で再び本州を目指します。海峡線では、津軽三味線の演奏がラウンジでありました。こもれびの名に合う、緑と青の車窓で聴くのもまた一興。演者の一人はブラジルで津軽三味線を学んで2月に青森へ引っ越した方だとか。

 

青函トンネルの中は四季島も100km/h以上で走ります。

 

青森駅へ着くと、三内丸山遺跡へバスで向かいます。バスには四季島のロゴが冠され、ヘッドレストも四季島です。通路にはレッドカーペットが敷かれ、四季島専用のバスです。四季島以外のツアーで使用するときはレッドカーペットはないそうです。高貴な気分になりますね。

三内丸山遺跡へは、遺跡の敷地内もバスで入っていきました。天皇陛下ですら敷地内へバスは入らず、四季島だけ入れるそうで。高貴な身分になりますね。晴れて平民です。

 

行きたかった念願の三内丸山遺跡、教科書で見た掘立柱建物が目の前にあります。竪穴住居の中も見学できました。柱は虫害防止で焦がしてあり、当時の知恵をうかがえます。よく思いついたなほんと。

 

縄文時遊館では土偶や出土品の展示がされています。縄文土器を持たせてもらいました。ドキドキです。

 

隣の青森県立美術館を見学した後、併設のカフェでディナー。青森駅のホテル「ReLabo」のシェフに振る舞っていただきます。管理栄養士による健康的なコースで、なんと600kcalに満たないんです。チョコチップメロンパンよりも低カロリーなコースですよ。四季島で連日食べては移動を繰り返した胃疲れに配慮いただいています。淡泊な味わいかと思いきや、どれもおいしくて驚きました。

ReLabo MedicalSpa & Stay

 


青森駅では、りんごにされたことに怒っていると思しきねぶた3兄弟に見送られて改札へ。青函連絡船の名残を見つけて喜んでいると、奥からは賑やかな音が聞こえてきます。ねぶた祭のお囃子でした。皆さんお仕事や学校を終えてお見送りですよ。マジすか。ねぶた祭へは行ったことがなく、お囃子も初めて聴きます。クルーの一人が青森県出身で、お囃子に合わせてねぶた祭のステップを教えていただきました。楽しい!嬉しい!

3日目の夜は車中泊なので、再びバータイムを楽しみます。お隣には、最高級客室 四季島スイート でご宿泊のお客様。宮崎県からお越しで、日本の旅について語り合いました。四季島だから、バーだからできるゆったりとした語らい。いい夜でした。

みちのくを快走する四季島、寝静まる頃に盛岡駅で運転停車し、夜中の東北本線を少しずつ南下するようでした。

 

7/10 4日目 盛岡→上野

目が覚めると、四季島は単線を走っていました。ここは陸羽東線、4日目の朝は鳴子温泉のひとっ風呂から始まります。

 

鳴子温泉駅に着いた四季島は、3時間停車します。温泉街の楽しみといえば共同浴場!地元の方と同じ目線で温泉に入りたい!一番風呂のアツアツを堪能しました。気持ちいい~

 

四季島に戻って朝食をいただきます。このでっかいクロワッサン、マジうまです。クロワッサンが大好物。おかわりいただきました。東北・長野の食材を使ったワンプレートも朝にこそ食べたい味わいで、絶品でした。

 

鳴子温泉ではなんとこけしをいただけるのです。ホームには見本と引換券があり、いくつかある工房を選ぶことができます。食後のお散歩に引き換えに出かけました。こけしは、子供のおもちゃに作られた人形が発端と考えられています。どうして東北に広まったのか、地域差のある見た目なのか、いろいろ謎も多いようです。端材で作られた、旅人伝いに広まった、いくつか考えられそうです。

 

帰りには湯けむりマルシェという四季島停車日に開かれる朝市で買い物をしました。こけしを買うつもりでいたのでルンルンで駅に戻ってくると、妻がこけしになってました。

「こけしにしてやる~」

難しいと思う。

 

福島では大勢の駅員にお出迎えいただきました。駅ビルでお土産を買います。ももがおいしそうだったので、もものお菓子を職場のお土産にしました。おいしそう~!

 

4日目のランチは、石巻前「寿司正」の12貫。三陸の魚はとにかくおいしい。こはだのハリがまたたまらんの。そしてうに。納得のいくうにが摂れたとき限定でいただけるも。「妻と夜鍋してむきました」。海に感謝。三陸はいつでもいつまでも惹きつける場所です。ごちそうさまでした。

 

四季島は郡山で抑止。前日の午後から、白河の豪雨でダイヤの乱れがありました。4日目も雨は続き、郡山で運転見合わせになりました。

1時間以上待機しつつも在来線の再開見込みは立ちません。遅れを事前にうかがっていたので、発送用と後泊用に荷物は整理して、ラウンジでお茶をしながら時間を過ごします。夏の長距離列車は天候に左右されるもの。遅れを予想して後泊の夕食はなしにしていたので私たちの旅程には影響ありませんが、運営の判断を待ちます。

 

四季島は郡山で打切りとなりました。やまびこで上野へ戻ります。切符は手配され、グランクラスとグリーン車に分かれて乗車となりました。完乗とはならなかったものの、四季島は素晴らしい列車でした。ありがとう四季島!

 

上野駅に戻ってからは、フェアウェルパーティーが催されました。旅を顧み、杯を交わし、四季島から始まる新たな人生の旅立ちを願って、乗客全員で八点鐘を鳴らしてお開きとなりました。

そして、餞別の土産には、四季島の記念乗車証をいただきました。この4日間をともにした乗務員皆様のサインが記されています。ひとりひとりとの会話はかけがえのないもの。お世話になりました。ありがとうございました。また日本のどこかで会いましょう。

 

❏ 四季島に乗って

四季島に乗っていると、沿線から多くの方にお手振りをいただきました。鉄道博物館のお客さんや千刈小学校の子供たち、陸羽東線沿いの皆さん。東日本のありとあらゆる場所で歓迎いただきました。旅を進めるにつれて感じるものがありました。

四季島は、東北を元気づけるために生まれました。なにか鉄道で復興を手伝えないか。どうやって東北を伝えていこうか。こうした思索の末、四季島は5年かけて生まれました。

この4日間、車窓や食事、観光を通して、私たちは東北に魅了されました。地域の宝物をいただき、笑顔に溢れるふれあいを重ねてきました。おいしいものがあるよ。この景色はどうだい。この町は。旅を通した旅人と地元をつなぐ懸け橋が四季島の使命だといいます。四季島のコンセプト「深遊 探訪」も、魅力に気づいた東北へ、再び旅に出て深堀りをしてもらうために掲げられたもの。また東北に行きたい。知らないみちのくを知りたい。何度も東北を想わせてくれる列車でした。

沿線だってそう。四季島は愛されていると感じます。平日にも関わらず、信じられないほど多くの方が携わり、喜び、見送る。金ピカがかっこいいから。週に1回しか見れないから。地元を知ってもらえるから。思い思いの理由で、皆さんは四季島へ手を振ってくれます。

東北の宝を持ち、東北にいる人たち。東北の宝を知り、東北を知る私たち。四季島を通して手を振り合うにつれて、私はこう思いました。四季島は、みちのくの象徴。豪華さに憧れる旅の象徴と、宝物を伝えてくれる懸け橋の象徴。授業を止めて満面の笑みで手を振ってくれる子供たち。朝早くの畑仕事を止めて旗を振ってくれる沿線の皆さん。四季島がなければこんな出会いはなかったんだと気づくと、こみ上げてくるものがありました。唯一無二です。素敵な列車でした。

 

これからも、四季島がみちのくに燦然と輝く象徴であり続けることを願っています。

また日本のどこかで会いましょう。