太陽は冒険を紡ぐ。夜明けを道で迎えれば、その光に安らぎを覚える。浜で待つならば、その光は標と捉える。闇が影に変われば、抱いた旅への畏れは望みに変わる。陽の高さが心を伴うかのように、旅人は太陽とともに旅をするのだ。
冒険を望む者は端を志す。無心に端を目指し、空や海を求める。自らをはぐれ者に仕立てるように端へ端へと足を進める。家から端では飽き足らず、端から端へと求め出すのは、旅人の性だろうか。全くわがままで贅沢であるが、どうにも治りそうにない。
冒険を望む者は、ついに物語を紡ぐような冒険を志した。景色を求め地図を辿る、初心に戻る冒険をしよう。目指す場所には、ライダーが再び集う。日の入りの千里浜だ。日の出から日の入り。端から端へ。太陽を追いかける旅。来たれライダー。浜へ集おう。
Sunrise Sunset Touring Rally 2020、参戦記。
こんばんは。けーごです。
Sunrise Sunset Touring Rally 2020に参戦しました。
❏ SSTRとは?
SSTRは、日照時間中に本州を横切るツーリングラリーです。目的地が千里浜(石川県羽咋市)で、ここを目指して走るイベントです。太陽を追いかけてひた走る、ゴールとマキシマムタイムだけが設定されたラリーですね。
ルール
・日の出は日本海以外の海岸から眺めること
・日の入までに千里浜に着くこと
・道の駅・SA・PAに寄ってポイントを獲得すること
出発地も経路も自由。参加者の数だけシナリオがある冒険です。2017年に初参加して以来、すっかりラリーの虜になってしまったぼくは、今年も参加しました。
今年は過去最大の5000台超のエントリー。通常、5月下旬の週末に開催されます。しかし、コロナ禍での政府のイベント規制に5000人以上の規模のイベントの自粛が含まれているため、10/24に一旦延期となりました。それでも収束はみられなかったため、開催方式を変更しました。
MY SSTRという、10/1~3/31(除 10/24)の任意の日に出発する、毎日がSSTRのオープン制になりました。10/24が除かれているのは、三密を避け羽咋市に心配を与えない趣旨によるものです。コマ練、TRIAL RALLYの後に走りたかった(新品タイヤを使いたくなかった)ので、11/21に出走することにしました。
冬至まで1ヶ月、11/21の日照時間は10時間3分。過去最短の日照時間で走らなければいけません。下道ベースでは40km/hが限界なので、事あるごとにお世話になっている千代崎海岸(三重県鈴鹿市)からスタートして白山の麓を走る350kmにしました。冠山峠を越えたかったのですが、雪のリスクは回避したかったので無難に栃ノ木峠を経由しました。
日照時間こそ短いですが距離は知れているので、コマ図を用いて走行することにしました。初めて作ったコマ図はSSTR 2017。あのときは冊子にしていましたが、今はもうマップホルダーがあります。
作った本人が走るのでそんなにミスコースはないじゃないかな~楽しめる一日になりそうだ!
11/21 晴 最高14℃
04:00 愛知県大口町
ラリーパイロットの朝は早い。空気圧をチェックして、朝食を摂り、一路鈴鹿へ。朝方の国道23号はさすがにトラックが多いですね。お疲れ様です。
05:30 千代崎海岸
いつものベンチで待機します。北斗七星がよく見えたので、波音を聴きながら見つめているうちに空が白んできました。
夜明け前。この静かな時間はいつ過ごしても素晴らしいものです。
ライダーが日の出とバイクの写真を撮りに岐阜からいらっしゃいました。SSTR参加とは関係なく、趣味のようです。夢中になって写真撮影されており、微笑ましい時間でした。一枚バチッと撮ったらいい感じだったので、このまま日の出を待ちます。
06:34 千代崎海岸
さあ、行こう。約束の地へ。
コマ図の距離にラリーコンピュータの距離を合わせ、朝日に照らされた鈴鹿を駆けます。
椿大神社の鳥居をくぐり、国道306号で北上。滋賀までのルートは、自転車版SSTR第一弾 24 Century RIdeのルートと重複します。あのときは1時間かけて来たこの鳥居も、バイクでは30分です。速いですね。
07:30 道の駅 菰野
350kmを10時間なので平均35km/hで走らなければいけません。初めの1時間で28km。10分ほど遅れています。とはいえ休憩は無理には省けないので、コーヒー飲んで出発しました。
石榑峠の麓まで来ました。藤原岳は今日も見えます。
あぜを見るに、このときとほぼ同じ場所のようですね。
国道306号から国道365号へ移り、岐阜県を越えて滋賀県へ。今日は伊吹山が見えます。
ここは、TRIAL RALLY Rd.2 淡海 STAGE 2のルートです。2年ぶりの走行に、懐かしさを覚えました。
淡海のときは山頂が見えませんでした。このときの優勝は写真のMMGさん。Rd.1, Rd.2と連勝しました。奪還しに、ぜひまたお越しくださいね。
09:00 道の駅 伊吹の里
伊吹山は薄く冠雪していますね。滋賀県に入るとさすがに冷えてきました。カッパのズボンを履き、防寒対策をします。
ちょうど、ジェベルの参加者と同時に出発しました。法被を着ており、お祭り気分いいな~と眺めていました。そのまま国道8号で道の駅塩津へ向かわれましたが、ぼくは少し寄り道。
琵琶湖を眺めに来ました。相変わらず海のような佇まい。海と紛うので淡海、なまって近江となりました。またゆっくりと琵琶湖へ遊びに行きたいものです。
栃ノ木峠は驚くほど車通りがありませんでした。タイトコーナーはありますが、8号バイパスで新道野越を通らなくて正解かもしれません。淀川は一山越えれば日本海の見えるこの峠から始まります。大きな河川では最も分水嶺と反対側の海が近いと思われます。
必ず立ち寄らなければならない指定道の駅が近くにあるので、国道365号から折れて日本海を目指します。やけに勾配が低く、トンネルも狭い道です。旧北陸本線?と思っていたら、スイッチバック跡が現れました。調べてみると山中信号場というそうで。周辺はトンネル群として遺産化しており、鉄道マニアも数人見かけました。旧北陸本線といえば柳ヶ瀬トンネルのような木之本側の19世紀のトンネルを想起しますが、今庄側も知られた存在のようですね。
旧北陸本線から別れて舗装林道へ。国道8号へアクセスする最短ルートを通ります。TRIAL RALLYで通りそうな路面と線形の林道で、あれ?なんか真剣に走ってる?となんのラリーをしているのか迷う瞬間がありました。試走しすぎかもしれません笑
11:00 道の駅 河野
早くも日本海を眺めました。日の出から5時間、ギリギリオンタイムです。これから街へ降りて白山の麓へ向かいます。
伊吹で見かけたジェベルの方に出会いました。道中出会ったSSTR参加者に法被にサインを書いていただいているそうです。#291 けーご 冒険!と書き、「千里浜で会いましょう」の合言葉で出発しました。
武生ICに入りたかったのですが、コマ抜けでミスコースしてしまい、少し遠回りになりました。10分ほどロスしてしまいましたが、なんとかなるでしょう。
12:30 道の駅 一乗谷
水路を挟んで道の駅が建っている変わった駅です。すぐ近くに越美北線 一乗谷駅があります。越美線は、越前と美濃(福井~美濃太田)を結ぶために建設された路線で、国鉄の負債で建設中止になりました。そのため、福井~九頭竜の越美北線と、油坂峠を越えた先の北濃~美濃太田の越美南線に分かれています。未成線の中ではあと少しで全通のはずだった惜しい路線です。
ガッツリと食事は摂れませんが、軽食はいただきます。洋菓子おいしかったです。一乗谷ジンジャーエールは、驚くほど飲みやすくて気に入りました。
大野バイパスからは、大野城が見えました。図ったかのような位置にあり、驚きました。地元の小牧山城しかり、よくこんなに都合よく小山があるものですね。
越前大野に寄り道したのは荒島岳を見るためです。福井県唯一の日本百名山。県に一つは百名山を挙げたいとの著者 深田久弥の思いから選定された山です。山頂にはあいにく雲がかかっていました。温見峠を越えれば来れる距離なので、また見れる機会はあるでしょう。宿題とします。
14:00 道の駅 瀬女
大野から野々市までは国道157号で手取川沿いに走ります。国道157号というと、どうしても温見峠のイメージがありますが、素晴らしいワインディングでした。道中、一瞬だけ白山が見えて思わず声をあげます。どこかで写真を撮れそうな場所があれば止まろうとしましたが、そのまま道の駅瀬女(せな)まで着てしまいました。
すると、地元のライダーに声をかけていただいました。
「千里浜まで行かれますか?」
SSTRはもはや、ゼッケンを見るだけでわかっていただけるほどの知名度になったんだ。感慨深い。
「昨日までは暑くて仕方がなかったのですが、今日は10℃で寒いですよね~」ペロペロ
ん?
「寒いですが天気は良さそうですし、千里浜では夕日が見れそうですね」ペロペロ
ん?ペロペロ?
「白山はここから小松まで出ないと写真撮れないんですよ~」ペロペロ
ん?あの、10℃なのにソフトクリーム食べるんですか?
「ええ、石川県民は冬でもソフトを食べますよ」
EEEEEEEE
SSTRのFacebookグループへ「鈴鹿から太陽を追いかけているようです。どうかご安全に」と詩的な言葉で投稿いただいていました。ありがとうございました!
14:45 道の駅 しらやまさん
ここ、道の駅しらやまさんは、白山比咩神社(しらやまひめ、通称ひらやまさん)の近隣にあります。
白山は古くから山岳信仰が盛んであり、三霊山(富士山,立山,白山)に挙げられます。霊峰白山と言われるほどですから、白山をご神体とする神社も多く存在します。その中でも、白山比咩神社は白山信仰の総本社と言われています。
とはいえ、白山は大きな山です。山岳信仰と神仏習合によって修験道もいくつかあり、その麓には総本社を謳う寺社仏閣がいくつかあります。とりわけ、長滝白山神社(岐阜県郡上市)、平泉寺白山神社(福井県勝山市)が有名です。古くから三社で山頂の利権争いが続いていましたが、神仏分離令を以て白山比咩神社が山頂および修験道の利権を獲得しています。
白山は調べるほどに興味の尽きない魅力的な山です。必ず冠雪の時期に写真に収めたいですね。
山側環状、津幡バイパス、のと里山海道を走り、千里浜へ最後の力走をします。45分マージンほどで完走できそうです。途中、Facebookを確認すると強風によりゲートが千里浜のゲートは閉まっていたので、レストハウスを目指します。冬ですから、仕方がないですね。
16:05 千里浜レストハウス
完走!無事でよかった!今回は完走へのプレッシャーを克服した感動というよりも、コマ図走行のおかげか終始楽しかったです。SSTRとTRIAL RALLYを合わせた気分で、コマ図見て時計見て景色見て、を繰り返していました。コマ図でSSTRもいいですね。5月開催なら600km級のコマ図を作り込みたいところです。
My SSTR 2020 #291
STAGE:386 km
TIME:9:24:24
夕焼けの千里浜はいつ来ても言葉を失います。
駐車場に戻ると、見たことあるバイクが入ってきました。よく見ると、コマ練スタッフでした!思わず声をかけているところ、SSTR公式で撮られていましたので拝借。驚きました。ここでもお会いできてよかったです。
ゴール受付をします。受付会場では常設展と物販もありました。Tシャツとマスクと千里浜讃歌CDを購入しました。風間さんもいらっしゃったので、CDにサインいただき、記念写真も撮っていただきました。レジェンドにこうして定期的にお会いできる環境は幸せなことですね。またお会いしましょう。
ホテルにチェックインして、夕食へ出かけます。例によって金沢在住の大学の後輩が来てくれたので、8番ラーメンを食べに。独特の注文形態、少し扁平したちぢれ麺、これが石川ソウルフードか~!おいしい!ごちそうさまでした!また会おうね~!
さて、ホテルです。
なかなかクセが強い。
自動ドアを開けて中に入ると「ありがとうございました♪」 過去形?
逆に中から外へ出ると「いらっしゃいませ♪」 背中に語りかけるか?
エレベーターに乗ると、扉が閉まって間髪入れずに上昇開始。到着直前から「バァン!ガッチャン!!!」と鳴らしながらドアが豪快に開きます。活きが良い。
部屋の暖房をつけようもんならそれはもう極暖。ヒートテックを脱ぎ捨てても快適に過ごせる常夏仕様です。この暖房で寝ろと言わんばかりの2枚のタオルケット。かけ布団の概念が変わります。
学生時代の下宿先のようなクセの強さで、どこか懐かしい。懐かしさか疲れか、朝まで爆睡でした。
11/22 晴 最高20℃
09:00 石川県羽咋市
チェックアウトをすると同士がいらっしゃいました。横浜からの参加者でした。コマ図に感心していただき、恐縮です。慣れは必要ですが作るのは今でも楽しいですね。
09:30 道の駅 のと千里浜
GoToトラベルで3000円分の商品券をいただいたので、パニアに入る分のお土産を買いました。これだけ買っても支払いは1200円。いいですね~
早速お菓子をいただき日向ぼっこします。時間に追われて走った分、時間を忘れて過ごします。
ダメ元で千里浜の様子を見にレストハウスへ向かうと、ゲートが開いている!やった!
バイクを止めて椅子を出して波音を聴いていると、見覚えのあるGSが。お!スークさん!先日開催したTRIAL RALLY Rd.6 験の優勝者です。SSTRとは関係なく千里浜に遊びに来ることは知っていましたが、あっさり合流できました。記念に一枚。かっこいい!
そのままサクッと東海北陸道で帰宅しました。
My SSTR 2020 #291
TOTAL:732.4km
さて、千里浜で記念写真を撮りましたが、普通の記念写真では味がない。ここはやはりカタログモノマネシリーズで。
1985年発売、偉大なるXLR250R (MD16)です。赤エンジンが最高ですね。過去にカタログモノマネシリーズはやりましたが、望遠レンズではなかったので、今回はしっかり望遠で撮ります。近くにいらっしゃった方にお手伝いいただきました。ありがとうございました。
ダカールレプリカならば、サビーヌの言葉で。
走らなければ進まない。夏は暑く冬は寒い。晴れは嬉しく雨は悲しい。当たり前のことを当たり前のように教えてくれるバイクとともに、冒険の扉を開けよう。ともに太陽を追いかけよう。ともに走ろう。千里浜で会いましょう。
#ComeRideWithUs
では。