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24 Century Ride

こんばんは。けーごです。

 

朝に太平洋を発ち、日没の日本海を目指すサイクリングをしました。
いわば、自転車版SSTRです。



ぼくには、好きな英単語が2語あります。triumph, odysseyです。

 

triumphは、苦労の末に果たした大勝利を意味します。勝利は正しく自らの力を働かせられなければ得られません。頭と体を使って得た勝利の喜びはとても大きい。競泳選手の頃からとても好きな単語です。

 

odysseyは、冒険の長旅を意味します。オデッセイは、今年のダカールラリーのテーマでもありました。自らの力で進んでいく力強さを与えます。自分の足で道を進もうと奮起させるこの単語は何度ぼくを鼓舞してきたことでしょう。

 

これらの英単語は、常に心の中で息づいていました。過酷な旅を選びがちなのも、その影響です。

 

そして、平成最後の夏、学生最後の夏に大きな旅をすべく、自らの原点の自転車旅を考えました。自分を誇り、感動するサイクリングをしたい。激走を締める夕焼けの千里浜のような、心から喜びを露わにしたい。そこで、自転車でSSTRを考えました。朝に太平洋を出て、自らの足で日本列島を縦断し、日没の日本海を目指す。とても良さそうです。

 

どうせなら、センチュリーライドをしたい。センチュリーライドは、100マイル(160km)を自転車で走ることです。自転車を始めた頃に、これだけ長い距離・長い時間を自転車と付き合えたら幸せだろうと憧れていました。センチュリーライドを知って以来、ぼくにとって大きなサイクリングとは、100kmでも200kmでもなく、100マイルを走ることでした。海から海へのセンチュリーライド、とても魅力的です。かつてほど運動をしない24歳は、この素晴らしいシナリオのセンチュリーライドにどこまで挑めるのか。大げさながら、この旅に24 Century Rideと名付けました。

 

次に、起終点の海岸を考えました。JR駅から近く、綺麗な海岸を条件に絞りました。太平洋を千代崎(三重県鈴鹿市)、日本海を水晶浜(福井県美浜町)にしました。Google Map上では、152kmでした。獲得標高差は2555m、伊吹山を上り下りするのと同じです。相当な体力を要しそうです。

 

ルートを決定しました。

MAP

 

夏休み中に走る予定でしたが、論文執筆・盆休み・北海道・台風で気がついたら夏休みも終わりがけ。9月17日に天気予報を見たら18日は晴れだったので、決行しました。



9月18日
05:10 草津駅
朝起きてサクッと草津駅まで走ったら、サクッとスマホを家に忘れました。もう取りに戻る時間はない。感想を記すために小さなノートとペンを買って電車へ乗りました。

 

くもりながら稜線の映える竜王山に見惚れていると、三雲駅を過ぎて高畑山からご来光が見えました。いい色です。甲賀駅からは朝霧に包まれました。

 

06:30 柘植駅
早い時間でも意外に人が乗っていました。関駅になると朝霧は晴れ、朝日に輝く濃尾平野が見えました。U2のCity of Blinding Lightsを聴きながら輝く街に気分が高揚してきました。

 

07:15 河曲駅
通学生に囲まれて自転車を組み立て、さあ出発。リエゾンのルートがわからない。太陽のある方向へ進んでいたら、正解でした。

 

08:20 千代崎海岸
8時に出発の予定でした。あれやこれやとしていたら時間を過ぎてしまい、20分遅れました。SSTR 2017のスタート地点に選んだ千代崎海岸は、懐かしく感じました。

 

近所の散歩を除いて、ロードバイクに乗るのは久しぶり。あれ?こんなに進まないもんだっけ?かなりしんどくない?4年前に琵琶湖一周したときのペースでは到底走れません。26km/hの巡航で精一杯。自転車の1km/h,1kmは慎重に勘定しなければならないことを思い出しました。

 

09:20 ファミリーマート鈴鹿インター西店
1時間経ったので小休止。カロリー補給に昆布おにぎりをいただきました。うまい!根室の昆布なんだろうかと北海道に思いを馳せながらあっという間に平らげました。がんばって走ろう。

 

10:00 道の駅菰野
御在所に牧場があるのか、バニラアイスをいただきました。8時に千代崎を出て、休憩込みの15km/hで走れば、18時に水晶浜に着く計算でした。20分遅れで出発して、ここまで休憩込みで15km/h。20分の遅れをこれから挽回しなければなりません。国道306号は小さな上り下りを繰り返し、身体にジャブを与えます。序盤から厳しくなりました。

 

菰野を過ぎると、石榑峠の入口に着きました。バイクで何度も走った交差点も、自転車で走ると新鮮でした。お彼岸を眺め、藤原岳を望みました。

 

11:30 藤原簡易パーキング
道の駅とは違うようです。お蕎麦と天丼をいただきました。うまい!国道のジャブがかなり効いていて、脚が本当につらい。ここまで50km走りましたが、まだあと100kmあります。昼の時点でまだ3倍あんのか... 後輪の空気がやや抜けていました。もう一度入れ直して、様子見です。

 

上石津と藤原を隔てる坂を越え(名前を知らない)、岐阜県へ入りました。上石津トンネルは涼しいですね。歩道の濡れに気を遣いました。

 

12:45 ローソン上石津牧田店
スローパンクが止まらなかったので、チューブを交換しました。10分で終わる作業とはいえ、少し焦ります。

 

ここから、藤川越へ挑みます。藤川越は、滋賀・岐阜県境にある国道365号の峠です。関ヶ原からは長い登りです。バイクでは好景観が印象的ですが、自転車には厳しい。何度も自分を励ましながら登りました。峠で伊吹山がよく見えました。伊吹山に一礼して滋賀県へ来ました。伊吹山のたくましさが登りきった達成感を盛り上げました。

 

記念に一枚。伊吹山は滋賀県側を表と捉えるのでしょうか。

 

14:30 セブンイレブン長浜内保東店
カロリー補給で小休止。ここまで来て、あと50km以上あります。琵琶湖で開けた長浜の風は強く、体力を奪います。まだまだ気を抜けません。

 

15:45 ローソン西浅井塩津浜店
お気に入りの場所で記念写真。太平洋を見てから琵琶湖を見ても、やはり淡海の似合う広さです。

 

塩津まで来るとあと40kmもありません。残りで休憩する箇所もないので、計算上では間に合いそうです。

 

しかし、気を楽にするのもつかの間、新道野越が待っています。新道野越は滋賀・福井県境にある国道8号の峠です。標高260mですが、消耗している身にはしんどい。一級国道だしそこまできつくないと思っていればそうでもない。沓掛(くつかけ)と書かれたバス停を見て、嫌な予感をしました。
沓掛は、きつい峠道の麓につけられる地名です。靴を脱いで体を休めたことから沓掛です。近くでは他に国道9号の老ノ坂峠の麓にあります。
これからきつくなる?と思えば、目の前に明らかにきつくなった勾配が見えてきました。なんじゃこの坂は!ギアをさらに落として登っていきます。
すると、上沓掛というバス停が見えました。またきつくなるの?と思えば、目の前にさらにきつくなった勾配が見えてきました。なんじゃこの坂は!!ギアを一番軽くして登ります。
両側の尾根が落ち込み、視界が開けてきました。このまま登り切るのかな?と思えば、目の前にさらにきつくなった登坂車線が見えてきました。心が折れました。路肩で立ちすくみました。少し休んでからなんとか登りきりました。

 

120km以上走り、峠を3本越えた喜びは凄まじく、福井県境でお馴染みのこの看板で記念写真。水晶浜30kmの表記を見たくありませんでした。

 

国道27号に入り、金山バイパスを西進します。自転車は旗護山トンネルを通れなかったので、地元の人に関峠の行き方を尋ねながら進みました。関峠を越えると、日本海が!全身から鳥肌が立ちました。ラストスパート、この日一番気合の入った走りでした。

 

18:03 水晶浜
間に合いました!やった!やったぞ!ぼくは走りきったんだ!千里浜のように涙はあふれませんでした。それでも、とてつもない達成感でした。自分で勝手に決めた旅ですが、自分をとても誇らしく思えました。



さて、これから敦賀駅へ戻らなければいけません。19:10のしらさぎの切符を購入しているからです。もし乗れないにしても、19時には着かないと列車変更の手続きができません。敦賀駅まで14km、ギリギリです。

 

19:00 敦賀駅
なんとか間に合いました。20:16のしらさぎに変更して、晩ご飯を食べ、自転車をばらします。しかし、ビンディングシューズがペダルから外れない。自転車には、ペダルを踏むだけではなく引く動作でも駆動させるためにペダルと靴を固定する仕組みがあります。競輪用の自転車のペダルについているベルトと同じ役割です。どうしてもペダルから靴が外れない。普段は、足をひねると外れるのに、全く外れない。仕方がないので、片足脱いで電車に乗りました。

 

起きると米原駅で、急いで乗り換えました。しばらくして、カメラ・財布・自宅の鍵の入ったかばんをしらさぎに忘れたことを思い出しました。しらさぎは名古屋行きなので、かばんは名古屋まで行きます。名古屋駅へ向かおうにも、財布を電車に忘れているので、運賃を精算する手段がない。スマホを家に忘れているので、駅に連絡する手段がない。鍵を電車に忘れているので、家に帰る手段がない。切符と自転車を持っていたので、草津までは帰れる。友達の家へ駆け込み、泊めてもらうしかない。な~にがトライアンフ、オデッセイじゃ、こちとらえらいことになってんじゃ!

 

アポなしで5回インターホンを押して、助けて~というと、知ってる声だ!!とドア越しに返ってきました。ご明答、通信なし通貨なし自宅なし靴片足なし、文明を失ったけーごです。

 

翌朝、名古屋駅が預かっていたので、受け取りに行ってもう一日を終えました。
しっかりきしめんをいただいてきました。



ルート
走行距離:153.75 km
走行時間:9:43:00
平均速度:15.8 km/h

 

総合
走行距離:194.53 km
平均速度:20.4 km/h



サイクリングはとても誇れましたが、その前後は誇れませんでした。まだまだ若造です。

 

では。